人々の “健康促進” のために!

人々の “健康促進” のために!
2015年春、沖縄の琉球大学キャンパス内 (産学共同研究棟) に立ち上げた “PAK研究センター” の発足メンバー(左から4人目が、所長の多和田真吉名誉教授)
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2008年6月27日金曜日

駆虫剤「イベルメクチン」が腫瘍の治療にも役立つ

「皮膚乳頭腫」とは、体内で胃癌などの悪性腫瘍が増殖し始めると、しばしば体外の表皮に現れる良性腫瘍の一種である。ヒトや犬猫、牛などの家畜にしばしばみられるいわゆる「イボ」である。最近、このイボに効く特効薬が見つかった。

2007年にトルコの首都にあるアンカラ大学獣医学部内科教室が、乳牛を実験動物に選んで、皮膚乳頭腫ができた9頭の乳牛に、駆虫剤「イベルメクチン」を一度だけ皮下注射したところ、3か月後に8頭の乳牛から皮膚乳頭腫が消滅してしまった、という結果を得た。薬の投与量は体重1 kg 当たりわずか 0.2 mg だった。この量は、腸内の寄生虫 (回虫など) を駆除(虫下し)するために、我々人間が通常経口する量(体重50 kg の場合、3錠=9 mg ) と同じである。凄いのは、一回の投与だけで、イボがほとんど大部分 (9割) 消えてしまうということである。日本では「マルホ」から一錠当たり約750円で市販されている(商標:ストロメクトール錠)。http://www.maruho.co.jp/

従って、一回分2ー3千円で、ほとんど根治できることになる。

さて、皮膚性の良性腫瘍NF1「通称レック」にも効くだろうか? 少なくとも細胞培養系では、良く効いた (増殖を抑えた)。動物実験は、表皮にできるNF1腫瘍の良いモデルがないから、我々研究者にはテストのしようがない。患者自身が各人、実際に飲んで試してみる以外には方法がない。それでは、悪性腫瘍ではどうだろうか? 2、3年前にロシアの首都モスクワの科学アカデミーのグループが、メラノーマなどの皮膚癌に効くことを、マウス実験で確かめている。その威力は、例のPAK遮断剤「FK228」とほとんど同じくらいである。

我々は最近、兵庫県癌センターとの共同研究で、イベルメクチンが、FK228やプロポリスと同様、PAKを遮断することによって、卵巣癌やNF腫瘍細胞の増殖を抑えることを確認して、その結果を学術雑誌に発表した。

Hashimoto, H., Messerli, S., Sudo, T. & Maruta, H. (2009).

Ivermectin Inactivates the Kinase PAK1 and Block the PAK1-dependent Growth
of Human Ovarian Cancer and NF2 Tumor Cell Lines.

Drug Discov. Ther., 3, 243-246.

従って、他のPAK依存性癌 /腫瘍 (例えば、スイゾウ癌、大腸癌、子宮癌、肺癌、乳癌、前立腺癌、グリオーマ、MM、NF、TSCなど)にも効くかどうか、動物実験/臨床テストを将来やってみる価値があろう。 細胞培養系で、NF腫瘍細胞以上に、グリオーマ細胞の増殖を強力に抑えることを、我々はごく最近確かめ、まず致死な末期グリオーマ(神経膠腫)に対する治療効果を、マウスを使った動物実験で目下確認中である。

ちなみに、この抗生物質「イベルメクチン」は、1980年代初めに米国の大手製薬会社「メルク」と北里研究所との共同研究で、(我々「敗戦前後」に生まれた世代に馴染み深い)虫下し「サントニン」に代って、新しく駆虫剤として開発されたものである。

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